講師紹介

 1975年生まれ。高校時代独学で小論文の書き方をマスターし、以後小論文関連試験を次々に突破。現役時代に、大阪大学文学部(論文試験あり・当時)及び、早稲田大学に合格。一旦入学するが、2か月後、受験をやり直すことを決める。翌春、京都大学文学部(論文試験あり・当時)並びに慶應義塾大学文学部(小論文試験あり)に合格。京都大学進学後は国語学国文学を専修し、学術論文の書き方を学ぶ。
 卒業後は、NHK(論文試験あり)にアナウンサーとして採用される。在職中に編成局長特賞、放送局長賞など受賞。入社十数年目からは放送局の新人キャスター採用の選考にも加わり、論作文や面接の審査を経験する。
 15年勤務の後、退社。ウェブ小論文塾を開講する。著書に「落とされない小論文」(ダイヤモンド社)、「合格論文はこう書く! 公務員試験小論文 頻出テーマ完全攻略」(高橋書店)、「昇進試験小論文合格法」(自由国民社)、「文章が苦手でも『受かる小論文』の書き方を教えてください。」(朝日新聞出版)、「大学入試 最速で合格をつかむ 志望理由書の書き方」(文英堂)などがある。

AIと人間による指導の違いは何か?

 最近では、自分の書いた文章を AI に見てもらおうと考える人もいるようです。しかし、現状では AI と人間との間には決定的な差があると言わざるを得ません。
 一つ例を挙げてみます。私どもの塾には、毎日のように次のような依頼が寄せられてきます。
「この度昇進試験を受けることになりました。その対策をしたいと思います。私の書いた小論文を添削指導してください」

 このような本文と共に、ワード添付された小論文が送られてきます。
 ワードを開くと、次のような答案が添付されています。

「私は課長代理に昇進したら、現場のリーダーとして、次のようなことに取り組んで行きたい。
 1つ目として、部下の育成に力を入れていく……」

 この依頼メールと、答案をそのままAIに打ち込んでみると、わずか数秒で「指導」が返ってきます。

○AI
「抽象的な言葉が多いので、具体的な例を盛り込んで書くようにしましょう」
「データを盛り込むとより説得力のある答案になります」
「末尾はもっと力強い言葉で締めた方が良いでしょう」

このような「指導」に加え、
○AI
「模範解答を作成しましょうか?」

という提案までしてくれます。

 なるほど、AIが指導することの一つ一つは間違ってはいません。しかし、決定的なことが欠けています。私であれば、まず「この答案は、どのような出題に対して書いたものでしょうか?」と聞くでしょう。小論文試験ならば当然出題があるはずですが、時々出題をつけずに答案だけ送ってくる人がいるのです。

 言うまでもなく、出題が何であるかによって書くべき内容は全く違ってきます。

・課長代理に求められる役割とは何か、述べよ
・職場の働き方改革にどのように取り組んでいくか、考えを述べなさい
・当社の目指すべき姿について、論じなさい

 いろいろな出題が考えられますが、まずそれを確認しなければ、この答案が良いのか悪いのかは、何も言えません。ところが、 AI はそれを聞くこともなく「指導」を行います。挙げ句の果てに、AIは模範解答の作成まで提案してくれます。出題が分からない状態で、模範解答も何もあったものではないのですが、そんなことはお構いなしです。このような欠陥指導であっても、もっともらしいことを言ってくるので、「なるほどAIは良い指導をしてくれる。これで十分だ」と考える人が出てきます。

 ここに挙げたことは、AI が抱えている問題点のほんの一例に過ぎません。仮に「出題を確認する」ということができるようになったとしても、まだ相当に問題が多いのです。

 現時点では、 AI は「表面的に文章を整えることしかできない」状態です。小論文試験とは何か、指導に当たって何をしなければいけないのか、という本質を掘り下げて考えることは(今の時点では)できていません。
 もっとも人間が指導する場合でも、本質を理解できていない人が指導すると、同じ結果になってしまいますから、注意が必要です。